1. 環境パイル工法開発の背景
2010年頃まで、住宅の地盤改良においてはセメントや鋼管を使用した工法が一般的で、木材が用いられることはほぼありませんでした。ではなぜ環境パイル工法を開発したのか、その背景をご紹介します。
環境パイル工法は兼松サステックが独自開発した防腐・防蟻処理木材による地盤補強工法で、4万5千棟以上の施工実績がある他、「地球環境大賞」や「エコマークアワード」といった賞も受賞するなど成長を続けています。
本ページでは一体なぜ地盤補強に木材を使用するのか、どのように開発を行ってきたのかなど、環境パイル工法開発の背景と歴史をご紹介します。
2010年頃まで、住宅の地盤改良においてはセメントや鋼管を使用した工法が一般的で、木材が用いられることはほぼありませんでした。ではなぜ環境パイル工法を開発したのか、その背景をご紹介します。
日本は国土の大部分を森林が占めますが、適切に間伐を行わないと、若い木が成長できないなど、森林が不健全な状態になり、CO₂の吸収能力も低下します。そのため間伐や植林が必要不可欠ですが、これらには当然コストもかかるため、間伐材を有効活用していくことも重要です。
古来から現在にかけて、木材は建築物の主材料として広く利用されてきました。また、建物自体だけでなく軟弱地盤の地盤補強材としても木材は一般的であり、有名な例としてはヴェネチア、佐賀城石垣、東京駅丸の内駅舎などが挙げられます。
しかし、近年では木材を用いた地盤補強は衰退してしまいました。理由としては、セメントや鋼管などを用いた地盤補強工法の台頭に加え、木材の支持力特性が不明であったこと、腐食や蟻害といった耐久性への懸念などが挙げられます。
特に、「木=腐る」というイメージが根強くあり、それを覆せる根拠が十分ではありませんでした。
一方兼松サステック(旧兼松日産農林)には、木材の防腐・防蟻処理技術の研究開発および処理木材を扱う木材・住建事業部と、地盤補強工事を行うジオテック事業部が存在していました。
このような背景から、国産間伐材に自社技術の防腐防蟻処理を施し、地盤改良材として地中に打設する「環境パイル工法」の開発がスタートしました。
木材を劣化させる主原因としては、木材腐朽菌による腐食と、シロアリによる蟻害の2つがあります。基本的に木材腐朽菌とシロアリは水中で生息できない生物のため、地下水位より下であれば被害を受けるリスクは低くなります。しかし、地下水位より上の部分については被害を受ける可能性があります。
そこで、木材腐朽菌とシロアリの両方の被害を防ぐための薬剤を、専用の窯で木材に加圧注入することで、地下水の有無に関わらず被害を防ぎます。
防腐・防蟻処理を施した木材に対して、野外試験と室内試験の両方を行い、その効果を確認いたしました。
野外試験では、シロアリ生息地域に処理材と未処理材を地中に打設し、無処理材で被害が出る一方、処理材では被害が無いことを確認しています。
室内試験では、湿潤と乾燥を繰り返すことで劣化を促進し、60年経過相当とした試験片をシロアリや腐朽菌にさらすことで、薬剤の効果が十分に持続していることを確認しております。
地盤補強材としての支持力については、実際に木材を打設し、荷重をかけたうえで沈下量を測定する「載荷試験」を行うことで確認しました。この載荷試験を国内複数箇所で行うことにより、木材の支持力特性を明らかにしました。
防腐・防蟻性能や支持力の試験結果をまとめて、第三者機関で性能証明を取得することにより、「環境パイル工法」が誕生しました。
環境パイル工法が誕生してから15年以上経過し、施工実績、認知度ともに大きく向上してきました。最近では「環境パイル工法」の理念や取り組みが評価さて、賞を頂く機会も増えてきております。
環境パイル工法は、間伐材等の国産木材を有効活用することで国産材の需要拡大や国内の林業活性化、CO₂の削減などに寄与してきました。最近ではその取り組みが評価され、多くの賞を受賞しています。